米津玄師の久しぶりのライブツアーの発表があり、私はM八七シングル封入一次先行で見事当選した。
名古屋公演が。
ちなみに私は神奈川在住だ。
しかし私は名古屋に遠征するのはこれを含めると3回目になるので、まずは当たって安心した。
1人で行くのも3回目だし、宿と新幹線の予約も手慣れたものだ。
個人的な話になるが、たまたま嫌なことが重なったり、自分が抱える精神障害について考えたりする機会があり、結構ナーバスな状態になっていた。
もうどうでもいいや、と投げ出すような気持ちもあり、今回のライブが終わったら死んでやろうかとさえ思った。
そして迎えたライブ当日。
体調に不安があったためヘルプマークを携えて出かけた。
グッズは事前に東京で買っておいたのでのんびりと向かい昼頃名古屋到着。
適当に時間を潰し1時間くらい前に会場に着くとかなり人がいた。当たり前だ。
チケットの管理番号が早く、入場したらまさかのアリーナ席だった。
そして、ご本人様登場。
POP SONGを歌うご本人のあまりの迫力に最初は呆気にとられたが、2曲、3曲と進んでいくたびに、涙が浮かんできた。
学校に行きたくない時、行けなかった時。
うまくいかない時。
死にたかった時。
いつも聴いていたのは米津玄師の音楽だった。
今までのその全てが一気に蘇ってきて、ここでもうすでにかなり感極まっていた。
そして、カナリヤが流れた。
いいよ、あなただからいいよ、と優しく包み込んでくれるこの曲は、普段CD音源を聴いているだけでも号泣必至で、私の中で米津玄師好きな曲ランキング1位2位を争う曲だ。
その次はLemon。
もう涙が溜まって溢れそうだったがなんとか持ち堪えた。
最初はおちゃらけたMCで場を和ませた米津玄師だったが、途中のMCでこんな話があった。
コロナで客が声を出せないライブを行うことを余儀なくされ、窮屈な思いをしているかもしれない。
でも、声が出せても出せなくてもいい。
ライブのノリについていけなくても盛り上がれなくてもいい。劣等感を感じなくてもいい。
嫌なことがたくさんあって明日や明後日やりたくないことをやらないといけない、でも今夜くらいは一人一人が美しい夜を過ごせるようにしたい。
表現の違いや曖昧な部分はあるが、概ねこのようなことを言っていたと思う。
そして、次の曲はひまわりだった。
そこで、ついに私の涙腺が決壊してしまった。
みんなとワイワイ楽しめなくても、ついていけなくてもいい。一人一人そのままでいい。
クソみたいな世の中人生だけど、今夜くらいは美しくあれますように。
彼のそんな寛容さ、そして祈り、そんなところに私は惹かれたんだと強く感じて、なんだか自分が肯定されたような気がして、もう我慢できなかった。
みんなで声を出して盛り上がろう。みんなに合わせて手拍子しよう。
ライブはどうしてもそういう雰囲気になりがちだが、私はどうもそういうノリが苦手で居心地悪く感じることが多い。
でも、それでいい、無理に合わせることはない、一人一人が何かを感じられればそれでいい。
そういうメッセージを感じて、本当に泣いてしまった。
そこからはテンションが高い曲が続き周りの客が盛り上がる中1人だけ泣きじゃくっていた。
本当に涙が止まらなかった。
私は、ついついないものねだりをしてあるがままの幸せに気付いていなかったのかもしれない。
色々辛いこともあるけれど、私は「幸せ」なのかもしれない。
これまでも、そしてこれからも。
ここまで優しく肯定してくれたと感じたのは初めてで、なんだか魂レベルで報われたような気がした。
焦らなくていい、自分のペースで生きていこう、頑張ろうと自然に思えた。
これからも辛いこと嫌なことはたくさんあるしどうにもならないことも多いけど、せめて安らかな夢で眠れますように。
自分は生きていてもいいんだ、と思えた。
もう少しだけ、生きてみようかな。
そんな気になった。
彼の曲は、「俺が幸せにしてやる」「嫌なことなんて蹴散らしてやる」みたいな押し付けがましいガッツはない。
嫌なこと辛いことも丸ごと受け止める、そして何より、「〜できますように」とある意味突き放すような言葉で表現する。
自分がこうしてあげる、ではなく、君も自分もこういう風にできたらいいよね、でも無理なこともあるし、それも受け入れてなお安らかで美しくいられますように、という優しい祈り。
彼の曲にはそんな祈りが根底にあると思っている。
ある意味他力本願的だからこそ、自分がこうする、と断言するよりも誠実なのだと思う。
「君が望むならそれは強く応えてくれるのだ」
私が望むなら、強く応えてくれるものはある。それが神か仏か何かはわからないが、とにかく無駄ではない。
「痛みを知るただ1人であれ」
痛みを知っているからこそ、見える世界がある。
誰とも共有できない、私1人だけの痛み。人はどこまでも1人。
だからこそ、誰かの痛みに寄り添える。
米津玄師と同じ時代を生きていてよかった。
あなたの歌声が私を受け止めてくれる限り、少なくともどこかに救いはあるでしょう。
これからも聴き続けます。ありがとう。
涙でメイクが落ち、マスクもビチャビチャになった酷い顔で、せっかくのグッズのタオルを濡らしながら、私はそう思いました。
みんなも米津玄師を聴こうね。